読書猿の「独学」なんでも相談

『独学大全──絶対に「学ぶこと」をあきらめたくない人のための55の技法』著者の読書猿さんが「勉強が続かない」「やる気が出ない」「目標の立て方がわからない」「受験に受かりたい」「英語を学び直したい」……などなど、「具体的な悩み」に回答。今日から役立ち、一生使える方法を紹介していきます。

※質問は、著者の「マシュマロ」宛てにいただいたものを元に、加筆・修正しています。読書猿さんのマシュマロはこちら

Photo: Adobe Stock

[質問]

 今さらながら政治にちゃんと向き合おうという気持ちになっています(今まではなんとなく政策に目を通して投票先を決めていました)。

 人の意見をそのまま受け入れるのではなく批判的に、自分で考えるためには日々現れてくる情報にどのように向かい合っていけばいいのでしょうか。

 Twitterでも政治的なツイートを見かけることが多くなりましたが、本当にそうなのか?と思った時にどうすればいいのか迷うことが多いです。

迷うことのできる機会・経験は希少かつ重要です

[読書猿の回答]

 本当にそうなのか? と思ったら、腰を据えてじっくり迷ってください。結論を急き立てるものから自身を守るには、迷うことを厭わず、迷っている自分を否定しないことから始めるしかありません。

 迷うことは面倒くさいことですし、認知負荷も高い。生き物であるヒトとしては回避したくなるものです。また生活で遭遇するあらゆる場面で迷っていると日常が立ち行かなくなる。更に迷っていると「まだこんなことも決められないのか」となじってくる人も現れます。

 今日、こうした迷うことを回避したいヒトの傾向や迷いを蔑む社会的圧力の存在は、ある種の人たちに知れ渡っているので、メンタルトラップの設置場所に頻用されがちです。

「分かりやすい図式を与えてくれるもの」(例えば陰謀論は「何者かの悪意」というシンプルな説明で世の中の目障りなことの多くを説明してくれます)などを含めて、私達を「結論」へ駆り立てるものは、枚挙に暇がありません。

「あなた、迷ってますね。辛いですね。でももう大丈夫。これさえあれば、あなたは迷いから解放されますよ」などと明言するものはむしろ少なくて、大胆に断言/予言したり、複雑な問題を二項対立にして一刀両断したり、小さな矛盾をあげつらって議論を一方的に完了したり、分かりやすい敵を教えてくれたりします。

 こうした中、大切な場面で迷うことのできる機会/迷った経験は希少かつ重要です。

 迷うこと無く下された決定や行動は条件反射やルーチンワークに過ぎません(それらが我々の生活や社会の大部分を支える不可欠なものであることは認めるとしても)。

 本当の決断と、それを可能にする知性は、迷いの中でこそ育ち、鍛えられます。

 また迷うためには、知識が必要であることも申し添えるべきでしょう。学ぶことは、先人たちの出した結論をただ受け取るだけでなく、結論に至るまでに重ねた逡巡を部分的にであれ共有することでもあるのです。

 最後に参考文献を。

 条件反射に陥らず、本当にそうなのか?と立ち止まることのトレーニング書として『思考力改善ドリル』

 迷うことの倫理性と知性との関係を扱った名シーンを含む(先ごろ完結した)『チ。』第8巻



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