『独学大全──絶対に「学ぶこと」をあきらめたくない人のための55の技法』著者の読書猿さんが「勉強が続かない」「やる気が出ない」「目標の立て方がわからない」「受験に受かりたい」「英語を学び直したい」……などなど、「具体的な悩み」に回答。今日から役立ち、一生使える方法を紹介していきます。

※質問は、著者の「マシュマロ」宛てにいただいたものを元に、加筆・修正しています。読書猿さんのマシュマロはこちら

Photo: Adobe Stock

[質問]

 初めまして。いつも楽しくブログや著書を読ませていただいております。

 私は文章を書くのが苦手です。小さい頃はスラスラと書けたのに、大人になるにつれ、どんどん筆が止まるようになりました。最近は、最初の一文すらも完成しません。

 書く文章の種類にはよりません。人に読まれると思うとどうしても手が止まってしまいます。この文法は正しいのだろうか、この言葉で誤解はないのだろうか、この表現は余計じゃないのかと様々なことが頭の中をぐるぐると回ってしまいます。頭の中の言葉を整理し、文章化するプロセスがとても苦手なのだと思います。

 このマシュマロの文章を書くときには、読書猿さんがご紹介なさっているノンストップライティングの手法を用いました。しかし、完成させるまでに1時間以上かかりました。それなのに、こんなに稚拙な文で嫌になります。

 私の質問は四つあります。

1. 文法に不安があり、表現法も怪しい私がノンストップライティングをするのは効率が悪いのでしょうか。

2. もっと基本的なところから、文章の品詞分解から始めて、一から日本語を学び直した方が良いのでしょうか。

3. 品詞分解をするなら夏目漱石さんの「こころ」でやってみようと思います。整った日本語と言われているし、私もそう思うからです。ですが、満足するまでモチベーションが続くのか自信がありません。谷崎潤一郎の「刺青」なら私の好きな小説ですので、継続できるかなと考えています。品詞分解の題材はなんでもいいのでしょうか。

4. それとも、何か別のアプローチがありますか?

 なんとか文章の苦手意識をなくしたいです。

 長くなってしまい申し訳ございません。宜しくお願いいたします。

「苦手を克服しないまま、書く」方法があります

[読書猿の回答]

 私も書くことには苦手意識を持ってて、それも書くたびに大きくなっている気がします。なので、お伝えできるのは、苦手意識を払拭できなくても、それでも書くことができる方法だけです。申し訳ない。

 書けなくなるのは、あなたもお書きになっているように、「この文法は正しいのだろうか、この言葉で誤解はないのだろうか、この表現は余計じゃないのか」などなど、今書いている文章について「これでいいのか」という横槍が繰り返し入るからです。

 これには世にある文章本にも、いくらかの責任があります。

 多くの文章本は、「~するな」「~してはいけない」というネガティブな命令を主成分としているからです。

 ありもしないマナーを捏造する輩を「マナー講師」と呼びますが、多くの文章本は、文章マナー本であると言えます。

 もっともこれには伝統があって、「文章の書き方」は江戸時代には礼儀作法のジャンルのひとつでした(今でも「手紙の書き方」にその痕跡があります)。文章とは、特定の相手ごとに決まった様式と言葉遣いを遵守すべきコミュニケーション儀礼だったからです。

 さて、次の記事では、うるさくいってくる脳内の存在を「仮想の読み手」と呼びました。

 書くことは何故苦しいのか? スランプを破壊するいくつかの方法

 ノンストップライティングは、邪魔してくる「仮想の読み手」を速度で置き去りにする方法です。

 なので、あなたのように「仮想の読み手」に悩まされている方にこそ向いていると思います。

 いくつか方法を追加するならば、

1.一文を書くのが大変なら、最初は単語だけで、ノンストップライティング(NSW)する。

 NSWは速さが本質なので、一つの文を書くのに悩んで手が止まってしまうなら、単語だけを投げつける感じで始めるとよいです。そのうち、単語をいくつか組み合わせたフレーズや、短い文が出てきたら、そのまま書き進めましょう。

2.ノンストップライティング(NSW)したものを手直しするのに時間がかかるなら、もう一度(今書いたものは見ずに)ノンストップライティングする。

 NSWを繰り返していくと、次第に余計なものは消えて、本当に書きたかったもの、書くべきものが残ってきます。書くのに苦手意識がある人は、なるべくこの苦行を手短に済まそうと、1回で完成品を作るろうとしがちです。しかし、これはもったいない。同じテーマについて何度も書くことは効果も高く、さらに良いことに改善を実感しやすい。

 加えて言うなら、人は、まず書き出し、「なんか違う」と思って書き直すことを繰り返す以外には、まともな意味で、思考することも、自分の考えを把握することもできません。極言すれば、人がいきなり書き下ろすことができるのは、以前に書いたことだけです。

 当人にとって新しいことを書くためには、繰り返し書き直すことは必須です。

 なお文法や日本語についての苦手意識は、中学国語をやりましょう。

 小池陽慈先生の『中学入試 国語授業の実況中継』が本当によい本なので、ご一読を。

 さて、私は今、あなたのような人のために『文章大全』という本を書いています。

 多分、書き出しは「書くことはヒトには難しすぎる。」に、副題は「それでも書くことをあきらめられない人のための」となると思います。



Source link