日本最難関大学である東京大学に入学し、さらに体育会(※東京大学では「運動会」と称する)の花形である野球部で活躍した学生は、知力と体力を兼ね備えたスーパーエリートと呼んでいいだろう。彼らのような人材は、野球部を引退した後はどのような道に進んでいるのだろうか。東大野球部のウェブサイトやスポーツ紙には、東大野球部の4年生の進路が毎年掲載されており、それらを集計すると興味深い事実が見えてきた。今回数字を集めたのは、92年から現在の2022年まで。バブル崩壊を多くの日本人が実感しはじめた1991年の翌年3月に卒部した平成部員から令和部員までを追い、10年ごとの区切りのなかで、トレンドを紹介していきたい(全3回の1回目《92年~01年編》/#2#3へ)。

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 まずは、92年~01年の10年間のデータをもとに、卒部生の合計130人について以下のようなランキングを作成した。

 <進路割合>


 1位    就職(47%)61人

 2位    在学(25%)32人

 3位    大学院(20%)26人

 4位    未定(6%)8人


 その他、プロ1人

 <業界別>

 1位    銀行(14人)→就職者の23%

 2位    広告(7人)→同11%

 3位    生損保(6人)→同10%

 4位    商社(5人)→同8%

 5位    放送(4人)→同7%

 6位    鉄鋼、食料品、空運(3人)→同5%

 7位    不動産、自動車、建設、コンサル、情報・通信(2人)

 8位    出版、証券、電気・ガス、総合電機、その他製品、医療(1人)

 <企業別入社数>

 1位    電通:6人

 2位    日本興業銀行(現みずほ銀行):4人

 3位    日本長期信用銀行(現新生銀行)、東京海上(現東京海上日動火災保険):3人

 4位    日本開発銀行(現日本政策投資銀行)、三和銀行(現三菱UFJ銀行)、伊藤忠商事、三井物産、NHK、サントリー、日本生命、大成建設、新日鉄(現日本製鉄):2人

 5位    日本政策投資銀行、住友銀行(現三井住友銀行)、東京三菱銀行(現三菱UFJ銀行)、博報堂、三菱商事、TBS、テレビ朝日、住友海上(現三井住友海上火災保険)、キリンビール、三井不動産、東急不動産、全日本空輸、日本航空、三菱自動車、三菱自動車川崎、アンダーセン・コンサルティング(現アクセンチュア)、プライスウォーターハウス、岩波書店、野村証券、東京電力、日立製作所、ミズノ、NTTドコモ、住友金属鹿島、看護師、JALスカイサービス(現JALスカイ)、三井情報開発(現三井情報):1人

 ※卒部時点での進路。選手の他に、マネージャー(主務)、学生コーチも含んで算出している。出典は、日刊スポーツおよび東京大学野球部ウェブサイト。

バブル崩壊後も「銀行人気は高かった」

 92年~01年の10年間において、東大野球部卒部生の進路で最も多いのは、一般企業への就職である。当時は1991年にバブルが崩壊し、株も不動産も大暴落。以降、日本経済は「失われた10年」とも称される不況に陥り、新規採用を抑制する企業が増え、新卒就職率も低下。いわゆる就職氷河期を迎えることとなり、92年には80%だった新卒就職率は01年には57%まで低下している(文部科学省「学校基本調査」における、当年3月卒業者の5月時点での就職率。以下同)。

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