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 2021年11月28日~12月4日は「違法サイトへのアクセス、漫画村の4倍規模にまで拡大」「中国電子出版業界レポート」などが話題に。広い意味での出版に関連する最新ニュースから編集長 鷹野が気になるものをピックアップし、独自の視点でコメントしてあります(ISSN 2436-8237)。

政治

「漫画村」の4倍規模 違法漫画サイトへの月間アクセス数は4億目前に ABJ調査〈ITmedia NEWS(2021年11月29日)〉

 11月29日に開催された第5回「インターネット上の海賊版サイトへのアクセス抑止方策に関する検討会」の関係団体ヒアリングで、ABJが開示した資料に基づく記事。この検討会はオンラインで傍聴しましたが、他に、総務省から取り組みの進捗状況についての説明や、セーファーインターネット協会、日本漫画家協会・赤松健さんからのサービス精神旺盛なプレゼン(政府の検討会でもウケを狙わずにいられない)なども行われていました。

 検索サービス・広告事業者・CDN事業者は、国内事業者は迅速かつ適切に対応してくれるのに、海外事業者がなかなか応じてくれないから海賊版サイトがそっちの利用を選んでいるという、事実上の「1国2制度」状態が問題になっているようです。この会での重要な検討事項の1つになると思われます。そして次回のヒアリングはズバリその、検索サービスや広告事業者やCDN事業者の予定という。緊張感のある検討会になりそうです。

 ただ、2018年に刑法の緊急避難に基づくブロッキングが提起され猛反発が起きたときに比べると、いまはだいぶ慎重に議論が進められているようで安心しました。なお、今回から座長は、当時「ブロッキングはオープンな場で筋の通った検討を」と慎重論を主張していた憲法学者の曽我部真裕さんです。

 ところでABJマーク、Amazon・Apple・Googleはどうなったんでしょうね……? 電流協のホワイトリストには、2021年11月5日時点でもまだ載っていないようなのですが。ここでも「1国2制度」が。

名誉毀損ツイートをリツイートすることは違法なの?〈弁護士法人戸田総合法律事務所(2021年12月1日)〉

 ジャーナリストの伊藤詩織さんが、Twitterで誹謗中傷を受けたと訴えた裁判で、リツイートを行っただけの者も不法行為責任を負うとされた地裁判決の解説記事です。リツイートは賛意を表すものと短絡的に判断されているわけではなく、リツイートした人の前後のツイートから総合的に判断されているようです。

 Twitterは「ミニブログ」と呼ばれるくらいなので、第三者がプロフィールページを見たとき、リツイートが論点提示や批判目的でなされているように「読める」かどうかが重要、ということなのでしょう。別の裁判でも、地裁では「リツイート=賛意」と判断されたのが、高裁判決でひっくり返された事例もあり、個々の事例や人によっても判断は異なるようです。

Education Publishers Sue Shopify for Copyright, Trademark Infringement〈Publishers Weekly(2021年12月1日)〉

 最近、Amazon・楽天キラーとして注目されるようになってきたECサイト開発・運営プラットフォームの「Shopify(ショッピファイ)」ですが、海賊版の教科書や教材の販売が促進されているとして、教育出版社のグループが著作権侵害と商標権侵害で提訴した、というアメリカのニュース。Amazonのマーケットプレイスがかなりひどい状態になっているという報道は繰り返し目にしますが、似たようなモデルを展開しようとすると、やはり悪用しようとする輩が現れてしまうようです。

著作物利用、一元窓口創設へ 権利者不明でも対応〈共同通信(2021年12月2日)〉

 こちらは文化審議会著作権分科会基本政策小委員会で討議されてきた、拡大集中許諾制度等を基にした「簡素で一元的な権利処理方策と対価還元」について。中間まとめ(案)が出ています。

 授業と重なっていて傍聴できなかったのですが、概要資料のまとめには「新しい権利処理の仕組みの実現に当たっては、法制的課題や国内法制・条約との関係など、詳細な議論が必要。このため、本中間まとめで示した方向性を堅持しつつ、その実現に向けての法制的課題を、引き続き議論すべき」とあり、大枠は継続審議となった模様。まあ、そう簡単には進まないか。

 ただ同時に、「権利情報データベースの構築や分野を横断する一元的な窓口組織の創設等の環境整備については、関係省庁の支援を得つつ、速やかに進めていくことが望まれる」ともされており、やれることは先にやろう、という方向で着地したのではないかと思われます。

社会

小学館のアクセシビリティへの取り組みについて〈小学館(2021年12月1日)〉

 読書バリアフリー法の主旨にのっとり「出版コンテンツのアクセシブル化に取り組んでいます」という小学館からのお知らせ。2021年には社内に、アクセシビリティ対応推進の窓口となる部署を新設したそうです。「来館できない読者の方も利用しやすい電子図書館サービスへの電子書籍提供を本格的に進めていきます」と宣言しており、今後のラインアップ拡充が期待されます。やっとかよ。電子図書館(電子書籍貸出サービス)の現状については、先日書いた記事をご参照ください。

約10年で3000店が消滅、「町の本屋」の切実事情 | 激動の出版〈週刊東洋経済プラス(2021年12月3日)〉

 書店の苦境と取り組みについてのレポート。売れ残ったら返品できるかわりに粗利率が低い、そのため、出版物以外の商材を拡充する必要があるという現状は、書籍・雑誌の売り場面積縮小に直結しています。端的に言えば「小売店としては魅力的な商材ではない」状態なわけです。客観的な立場から勝手なこと言わせてもらえば、商売として考えたら、さっさと反転させて「売れ残っても返品できないかわりに粗利率が高い」にしないとジリ貧だと思うのですよね。

 実際のところ、そういう取り組みを「始めた」というニュースは、ずっと前から、何度も何度も目にしてきました。が、客観的に見て、実効性のある取り組みに繫がっているようには思えないのが正直なところ。出版科学研究所の基礎知識コーナーにも「責任販売制の導入や書店からの受注による配本への転換を進めている」と書かれていますが、どこまで進んでいるのか? ボトルネックはどこか? を検証する必要があるのでは。

漫画家の約9割がデジタル制作。半数以上は3Dを活用 ―漫画家実態調査アンケート―〈マンナビ(2021年11月30日)〉

漫画編集者の約9割がデジタル制作に好意的 ―漫画編集者実態調査アンケート―〈マンナビ(2021年11月30日)〉

 マンナビによる、マンガ家と編集者の実態調査アンケート。2017年に続く2回目です。かなりの人数から回収した貴重な調査ではありますが、男女比・年齢構成などはあくまで「このアンケートに答えた人」の比率であって、マンガ家・編集者の実態を示したものではない点には注意が必要です。女性比率が77.2%と異様に高く、「恐らく実態としても女性のほうが多いのではないか」という推測はできますが、ランダムサンプリングではないので。

経済

トーハン、全社方針と主要施策の進捗報告〈新文化(2021年11月29日)〉

 報告の中で、資本業務提携したメディアドゥとの取り組みについても触れられていました。NFTデジタル特典付き新商品は、成果が出ているようです。2022年には「NetGalley」連携を組み込んだ新仕入プラットフォームもリリースするとのこと。いろいろ動いてますね。

「出版物販売額の実態 2021」発行のご案内〈日本出版販売株式会社(2021年11月30日)〉

 今年から紙版がなくなり、PDF版のみの発行に。個人的にはPDFで良いし、実際、初めてPDF化した2016年から買い続けていますが、日販の発行媒体がそういう状態になるというのは、なんかいろいろ象徴している気もします。ただ、PDF版を販売している日販「Honya Club.com」は、いまだにOGPやTwitter Cardsにも対応しておらず、「やる気あるの?」と問い詰めたくなる状態のまま。まあ、今回からExcelでデータも提供されている点はGOODです。PDFから抜き出せないことはなかったんですが、手間が省けるということで。

ヤフー「Tポイント」の積算/利用を3月で終了、4月から「PayPayボーナス」に〈ケータイ Watch(2021年12月1日)〉

 ヤフーとCCCは2010年に包括的業務提携、2013年にはIDとポイントを統一していました。蜜月の時は長く続かず、ついに積算・利用が終了。思わず「うわあ」って声が出ました。そりゃ自前のポイント経済圏を優先したいですよね。完全提携解消というわけではなく、ID連携と情報連携は続くようですが、いつ終わってもおかしくない感じ。「CCCに情報を渡したくない」という方は、少なからずいらっしゃいますし。

ハイブリッド型総合書店honto「読書メーター」とのサービス連携を開始〈hontoPR事務局のプレスリリース(2021年12月2日)〉

 ちょっと驚いたプレスリリース。hontoは自身でもレビュー投稿を受け付けていますが、それ以外にブクログのレビューも掲載しており、これで読書メーターのレビューも表示されるという、まさに「ハイブリッド」な状態に。読書メーターはKADOKAWAグループ入りしてからレビューの外部提供を始めましたが、グループ以外の書店系では初と思われます。出版社公式サイトへの採用では、SBクリエイティブや徳間書店といった事例があります。

中国電子出版事情――巨大な市場規模、だが電子書籍ビジネスはこれから〈HON.jp News Blog(2021年12月2日)〉

 中国の電子出版業界「数字出版行業」について、北京大学・馬場公彦さんがレポートしてくれました。以前レポートいただいた「網絡文学(ネット文学)」の市場に比べると、いわゆる「電子書籍」「電子雑誌」の市場はかなり小さく感じます。とはいえ日本もマンガを除外すると、ガクッと小さな数字になるわけですが。

 おかげで、他メディアの報道で、「中国電子出版市場」として挙げられる数字がなんだか異様に大きかったり小さかったりする理由がわかりました。まさか「モバイル出版」の数字に、ハードや版権の売上も入ってるとは。日本語と表記は近くても示す範囲が違う、というのは結構な罠ですね。誤解しやすい。

イベント

 12月26日の HON.jp News Casting は2時間の年末特番! ITジャーナリストの西田宗千佳さんをゲストに迎え、2021年の出版関連ニュースをとくにテクノロジー的な観点で振り返り&掘り下げます。

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雑記

 500回記念! というわけではなく偶然このタイミングなのですが、「週刊出版ニュースまとめ&コラム」のISSN(International Standard Serial Number:国際標準逐次刊行物番号)を登録しました。ISSN 2436-8237 です。参考文献として示す際などに記載いただくと、同定・識別しやすくなります(鷹野)

CC BY-NC-SA 4.0
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※本稿はクリエイティブ・コモンズ 表示 – 非営利 – 継承 4.0 国際(CC BY-NC-SA 4.0)ライセンスのもとに提供されています。営利目的で利用される場合はご一報ください。





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