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 2021年9月26日~10月2日は「DeNAがエブリスタをメディアドゥへ売却」「大阪府の表現ガイドラインが炎上」などが話題に。広い意味での出版に関連する最新ニュースから編集長 鷹野が気になるものをピックアップし、独自の視点でコメントしてあります。

政治

「大阪府が萌え絵を禁止」? ガイドラインで炎上する大阪府は早くも「修正を検討中」〈キャリコネニュース(2021年9月29日)〉

 大阪府が3月に公開していた「男女共同参画社会の実現をめざす表現ガイドライン」で、いわゆる萌え系のイラストに×をつけ「女性を描くときは外見(若さや性的側面など)のみを切り離さずに、人格を持った多様な姿で描くようにしましょう」という記述があり、問題視されているというニュースです。漫画家の赤松健さんが「いや無理だから!」とツイート(↓)したことなどがきっかけで、炎上騒ぎとなりました。

 実際問題、そのイラストがただのアイキャッチではなく「人格を持った多様な姿」かどうかを、誰がどうやって判断するんだ? というのが、率直に言って疑問ではあります。「このガイドラインは、皆さんの表現を強制するものではありません」と書かれている一方で、「府民、事業者の方々にもご参考にしていただければ幸い」ともあるわけで。これが「表現規制」に繫がりかねない、忖度を要求されているのも同然だ、拡大解釈で悪用されるといった懸念があるのは理解できます。そういうの実際、多いですからね。

 こういう事案を冷静になって考えようとするとき、私は「逆の立場だったらどうするだろう?」というのを想定するようにしています。つまり、自分がその組織(自治体や企業・団体など)の広報担当者だったらどうするか? です。その組織の発信する表現として相応しいか否かという、「内規」はあって然るべきでしょう。内規ですから公開しないのが前提です。もし公開するなら、もう少し文言を練る必要があるように感じました。府のガイドライン(PDF)はまだウェブ上に公開されていますが、念のためアーカイブにリンクしておきます(↓)。

プラットフォームで個人が売買する際の特定商取引法の運用に関する消費者庁の見解について〈クリエイターエコノミー協会のプレスリリース(2021年10月1日)〉

 プラットフォームの利用者が、特定商取引法に基づく「販売業者」に該当する場合は、従来は、住所・氏名・電話番号などの個人情報を表示する必要があるとされてきました。これが、クリエイターエコノミー協会と、消費者庁や経済産業省などとの協議の結果、一定の要件を満たせば、プラットフォーマーの住所・電話番号の記載でOKとなった、というプレスリリースです。

 商品送付が必要となる物品売買とは異なり、契約した瞬間にコンテンツがプラットフォームのサーバーから提供される仕組みを、個人間売買(CtoC)という建付けで特商法の対象にするのはおかしいのでは? と、私は「note」がリリースされた当時から思っていた(というか書いた↓)わけですが、それが7年越しでおおよそ解消されたことになります。関係者の方々、お疲れさまでした。

 そういえば、トゥ・ディファクト運営時代の「パブー」が2019年1月ごろから、いきなり著者へ特商法表記を求めるようになったという騒ぎがありました。当時、経産省などあちこち取材して原稿の準備をしていたら、公開前に「閉店」というお知らせが出て脱力。書きかけ原稿を供養するつもりで、閉店ニュースの後半追記に使ったのを思い出します(↓)。

 その後、デザインエッグが事業継承した「パブー」では「販売主体はパブーです(BtoC)」という建付けで著者が住所氏名などを明かさずに済むよう取り計らっています(↓)。なので、結局のところ、事業者のスタンス次第でいかようにもなることだったのでは、という気もしているのですが。

社会

静岡県立中央図書館、図書館DX実証実験第2弾「利用者登録等Web申込」と第3弾「電子図書館」を10月1日から実施〈カレントアウェアネス・ポータル(2021年9月27日)〉

 利用者登録のウェブ申込みは朗報。少し前に、非常勤講師として勤務している大学が千代田区にあることに気付き、「これで千代田Web図書館が使える!」と思ったら図書カードの期限が切れていて、コロナ禍真っ盛りだというのに千代田区立図書館まで行かなければ更新できない事態に頭を抱えたことを思い出しました。

 ただ、静岡県の電子申請サービスを利用するには公的個人認証サービスの電子申請書が必要――つまり、事前に「マイナンバーカード」を発行しておき、ICカードリーダーで認証する必要がある、と。えーっと、マイナンバーカードってオンラインで申請はできるけど、交付は窓口まで行かないとダメじゃなかったっけ……?

「ゴルゴ13」連載継続へ さいとう・たかをさんの遺志を継ぎ | おくやみ〈NHKニュース(2021年9月29日)〉

 ご冥福をお祈りいたします。脚本や作画の分業システムが確立しており、生前から「自分抜きでも『ゴルゴ13』は続いていってほしい」と希望されていたことから、今後もビッグコミックで連載を継続するとのこと。お見事、天晴れです。

経済

【メディア関係者必読】鍵はアクセスの習慣化/メディアの収益化とブランド力向上を実現する3つのセオリー〈MarkeZine(マーケジン)(2021年9月28日)〉

 ユーザーローカル 代表取締役 伊藤将雄さんへのインタビュー。3つのセオリーは「関連記事」「コメント欄」「固定ファン」とのこと。これ、2つめの「コメント欄」は、PV増だけを考えたら良いのですが、総合的に考えるとなかなか難しいところではないかと。

 コメント欄は、活性化するほど荒しや誹謗中傷も増えてくるため、対策にも労力を食われる問題を抱えています。偶然ですが同じようなタイミングで、ヤフーからニュースへのコメント急増とともに不適切な内容が散見されたとして、ルールに則った利用の「お願い」というお知らせが出ていました。

 また、こちらも偶然ですが同じようなタイミングで、「コメント欄が情報工作の標的に」という報告書についてのニュースブログがありました(↓)。ロシアの工作らしいのですが、日本のメディアも標的になっています。コメント欄が、単なる荒しや誹謗中傷に晒されるといった域に留まらず、フェイクや党派制の工作に悪用されかねない点が危惧されます。

 HON.jp News Blog でもなにげにコメント欄を設けているのですが、いまのところ対応に苦慮するほどのコメント量にはなっていないため、大きな問題は出ていません。しかしこれが仮に数十倍になったとしたら、放置するわけにはいかない内容だったとしたら、その対応負荷に耐えられるだろうか? とは思うところです。

メディアドゥ、小説投稿サイト運営のエブリスタを買収…DeNAより2万2400株(持ち分の70%)を20.6億円で取得〈gamebiz(2021年9月29日)〉

 プレスリリースが届いた瞬間、「うお!」という声が出ました。もともとDeNAが70%、NTTドコモが30%の合弁でしたから、DeNAが持ち株すべてをメディアドゥへ売却することに。メディアドゥのリリースでは「インプリント事業との協働」に留まらず、「各電子書店が手掛けるオリジナル作品や成長著しいWebtoonへの原作提供など」についても触れている点は注目すべきでしょう。

 なお、このニュースに関連して「マンガボックス」について触れている方も多く目にしました。こちらはちょうど1年前、DeNA子会社のマンガボックスが「TBSを引受先とする第三者割当増資により資金調達」して合弁会社化した事案です(↓)。DeNAはまだ株式を51%持っており、手放していません。今回の「エブリスタ」のように持ち株すべてを売却する事案とはちょっと違う、という点を指摘しておきます。

訂正-LINEマンガ運営会社、イーブックにTOB 1株4750円〈ロイター(2021年9月30日)〉

 イーブックイニシアティブジャパンに対し、LINEマンガを運営しているLINE Digital Frontierが株式公開買い付け(TOB)の実施を発表しました。イーブックイニシアティブジャパンはヤフーの傘下で、ヤフーはZホールディングスの傘下で、LINEはZホールディングスと経営統合していて、LINE子会社だったLINE Digital FrontierはNAVER WEBTOONとともにWebtoon Entertainment傘下になっていて……と、たいへんややこしい状態になっています。

 要するに「ヤフーが保有する株式などを除くすべての株式」をLINE Digital Frontierが取得するので、イーブックイニシアティブジャパンがヤフーとLINE Digital Frontierの傘下になって、株式も非公開化される、というわけです。数カ月前に、LINEマンガとebookjapanのバックエンドが共通化されるというリリース(↓)もあったので、まあ、既定路線と言えるでしょう。いやあ、それにしてもややこしい。

技術

MediBangが参画するNFTマーケットプレイス「Adam byGMO」にて、漫画家・東村アキコ先生のNFTイラストを販売開始〈株式会社MediBangのプレスリリース(2021年9月29日)〉

 メディバンが「Adam byGMO」の販売代理店になるというプレスリリース。「メディバンペイント」「マンガネーム」といったアプリや、投稿&SNS「ART street」などを運営している会社なので、NFTマーケットへの出品促進を図るという意味では、親和性はそれなりに高いのではないかと思います。

 なお、このリリースを受けてあらためてNFTマーケット関連について調べてみたのですが、喧伝されている「情報の所有権」とやらが空手形あるいは絵に描いた餅にならなければいいのだが……という思いが強くなっています。例えば「Adam byGMO」のサービス利用規約には、このNFTマーケットで扱われている「商品」は、このサービスにおいて取引の目的となるNFT(Non-Fungible Token)を指すと明記されています。つまりここでは、コンテンツの取引をしているわけではなく、トークンの取引をしているのです。

 こちらの日本総研の資料(↓PDF15ページ目)でもNFTマーケットの問題点について整理しているのですが、とくに「NFTを紐づけるコンテンツはブロックチェーンの外にあるため、サービス停止等に伴いコンテンツにアクセスできなくなる可能性」というのは、電子書店の閉鎖リスクとまったく同じことではないか、と思うのです。

 同じ規格(たとえば Ethereum の ERC-721)でトークンが生成されていれば、あるNFTマーケットで購入したNFTを「出庫」して、別のNFTマーケットに「入庫」することも可能なのですが、それでもコンテンツそのものにアクセスできなくなる危険性は排除できません。コンテンツそのものをブロックチェーンに載せる実験も進んでいて、そろそろ実装できそうだという話も聞きますが、NFTマーケット側がそれに対応してなきゃ意味が無いわけです。さて。

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雑記

 緊急事態宣言が解除され、ようやく日常が戻ってくる――と思いたいところですが、これまでリバウンドは4回も繰り返されてきたわけですから、安心するのはまだ早いでしょう。いま繁華街や飲食店へ行くと、大声で騒ぐ方々が嫌でも目に入り、暗鬱な気分になってしまうのが予想できてしまうため、私はまだ「外出したくない」気持ちのほうが強いです。ギュッと抑圧されていたものが解放されたわけですし、羽目を外したくなる気持ちも理解はできるのですが(鷹野)

CC BY-NC-SA 4.0
CC BY-NC-SA 4.0

※本稿はクリエイティブ・コモンズ 表示 – 非営利 – 継承 4.0 国際(CC BY-NC-SA 4.0)ライセンスのもとに提供されています。営利目的で利用される場合はご一報ください。





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