[ワシントン 26日 ロイター] – ロビンフッドなど手数料無料のインターネット証券を利用する個人投資家が、米ゲーム販売大手ゲームストップなど「ミーム株」の価格を押し上げ、こうした銘柄を空売りしていたヘッジファンドを打ち負かしてから1年。米証券取引委員会(SEC)はネット証券が株式取引の頻度を上げるためにスマートフォンのアプリに組み込んでいる「行動心理的な刺激」に対する規制強化を模索している。

 米証券取引委員会(SEC)はネット証券が株式取引の頻度を上げるためにスマートフォンのアプリに組み込んでいる「行動心理的な刺激」に対する規制強化を模索している。写真はワシントンのSEC本部で2021年5月撮影(2022年 ロイター/Andrew Kelly)

ミーム株はブームとなった昨年1月に個人投資家の買いで価格が高騰。ゲームストップは株価が一時1500%余りも上昇し、空売りしていたヘッジファンドがショートスクイーズ(損失覚悟の買い戻し)を迫られた。

熱狂ぶりが最高潮に達した際には、いくつかの証券会社がミーム株の取引を制限し、投資家の怒りを買った。ロビンフッドのブラッド・テネフ最高経営責任者(CEO)などネット証券の幹部らは米議会の公聴会で説明を求められた。

SECは、人工知能(AI)による分析やビデオゲームに似た機能など、行動を促す刺激(プロンプト)によって株式取引や特定の商品の販売を促す証券会社やロボアドバイザーが増えていることに気付いた。

取引コンテストやポイント制、報奨制度などは、こうしたテクニックのほんの一部だ。華やかな音や鮮やかな色彩、通知機能、ソーシャルネットワークのツール、取引や投資のアイデアをまとめたリストなどもある。

法律事務所モーゼス&シンガーのパートナー、ハワード・フィッシャー氏は「若い投資家の多くが、酒を飲むことができない年齢であるにもかかわらずデジタルな金融取引で酔っぱらっていることを、SECは非常に危惧している」と述べた。ただ、証券業界はこうした動きに激しく反発すると見ている。

投資家の裾野を大きく広げ、誰でも簡単に、楽しく取引できるようにしているというのが、手数料無料の証券会社の言い分だ。ロビンフッドは25日のブログで、顧客が投資の基本を学べる材料をサービスに追加したことを明らかにした。

一方、手数料無料の証券会社が個人投資家の取引量を最大化しようとするのは、機関投資家を相手にする大手に注文を回送して稼ぎを得ているためだ、との批判もある。これは利益相反に該当する恐れがある。研究によると、一般的には個人投資家が保有資産を頻繁に取引すると損失を被る。

SECのゲンスラー委員長は先週、CNBCテレビで「米国民は毎日、行動を促すプロンプトを浴びており、証券会社のアプリやロボアドバイザーも同じ手法を用いている。目的は収益を増やすことだ」と述べた。

ゲンスラー氏は26日の声明で、こうした慣行に関するSECスタッフの勧告を楽しみにしていると表明したが、詳細には触れなかった。

SECは昨年8月に公表した市中協議文書で、デジタル上のプロンプトは、「最善の利益規則」に記された投資推奨に該当する場合があり得ると示唆した。2019年に導入されたこの規則は証券会社に対し、個人投資家にとって最善の利益になる投資推奨を行うことと、利益相反を特定することを義務付けている。

SECがこの規則を適用した場合、こうした慣行を用いている企業は情報開示を大幅に増やす必要が生じるだろう。規則順守の負担がビジネスにのしかかるとともに、訴訟の対象になりやすくなる可能性もある。

フィッシャー氏は「流れが大きく変わる可能性がある」と指摘した。

<新領域>

ロイターは昨年、ミーム株がブームだった際にオンライン証券上位6社で計1億件を超える個人口座が開設されたと報じた。

また、ゲーム感覚の取引機能への監視を強めている米金融取引業規制機構(FINRA)の調査によると、2020年に投資口座を開設した投資家のうち66%は投資の初心者だった。

米証券業金融市場協会(SIFMA)など業界団体は、こうしたデジタル慣行について、コスト節減や長期的な投資に導くなどの手段に使われれば、投資家にとって有益だと主張している。

規制を支持する専門家の一部も、SECは新たな領域に踏み込んでいると認める。こうした慣行が投資家の意思決定に直接どのように影響するかについての研究は限られるからだ。

ニューヨーク大学の特別研究員で元SEC職員のエドウィン・フー氏は「金融機関はこの問題に関して最良のデータを持っているが、幅広い共有を促すインセンティブはほとんどない」と話した。「ユーザーインターフェース(操作画面や操作方法)のデザインを投資アドバイスと見なせるのか否か、こうしたデザインが投資判断にどの程度影響するかは、重要な問題の1つだ。SECは経験による実証が必要な、非常に難しい法律問題に直面している」とした。

コロラド州立大学のジェームズ・フィールダー教授によると、ギャンブルやゲーム業界に関する研究から、明るい音や色など現実世界の刺激の再現を狙った刺激が「ユーザーの行動を誘導する」ことが分かっている。

「仮にこうした体験を、あたかもゲームであるかのように、実際のお金がかかっている取引の中に組み込んだとしたら、それは大問題だ」と懸念を示した。

(Katanga Johnson記者)



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