『独学大全──絶対に「学ぶこと」をあきらめたくない人のための55の技法』を推してくれたキーパーソンへのインタビューで、その裏側に迫る。

今回インタビューしたのは、発達障害当事者としてTwitterで子育てなどの情報発信を続けるなちゅ。さん。『独学大全』は何度も学ぶことに挫折してきた発達障害の人たちにおすすめしたい、最後の一冊」と語る理由とは? 反響のあった第1回に続き、今回は子育てをテーマに話を聞いた。(取材・構成/書籍オンライン編集部)

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得意、不得意が全く違う二人の子育て

ーー前回のインタビューでは、なちゅ。さんご自身の「大人になってからの学び」の話をお伺いしました。今回は、二人のお子さんの子育てで実践していることについて教えてください。

なちゅ。:私には中学校2年生(13歳)と小学校4年生(9歳)の娘がいて、二人とも、発達障害と診断されています。上の子はASD(自閉症スペクトラム)の傾向が強く、知的障害のグレーゾーン、下の子はASDよりも私と同じADHD(注意欠如・多動症)の傾向が強いタイプです。

 同じ親から生まれて育った姉妹ですが、二人とも個性は全然違います。

 長女はコツコツと積み重ねる学習が得意な子で、宿題もテスト前の勉強も一人で計画的に仕上げてしまいます。学校もほとんど休んだことがありません。親のフォローで習慣づいたわけではなく、小さいときからずっとそうでした。

 下の子は、特性上そういう学習の積み重ね方が難しいですね。しかもとても繊細。友だちの反応を過剰に気にしてしまったり、授業をみんなと一緒に受けるのが苦手です。気力が持たず疲れすぎてしまうので、学校には週の半分くらいしか行けていない状況ですし、数ヵ月にわたる不登校も何度も経験しています。ただ、理解力は抜群に速く、きらりと光るひらめきの持ち主でもあります。

発達障害“ガチ勢”の私が挫折してたどりついた「勉強がなんとなくしんどい」を解決するスゴ技なちゅ。

1980年生まれのワーキングマザー。発達障害(ADHD:注意欠如・多動症)当事者。中学校2年生(13歳)と小学校4年生(9歳)の娘、そして夫も発達障害の特性を強く持つ。長女の発達障害診断をきっかけに、独学を開始。現在も、自らの発達障害や子育てについてTwitterを中心に情報発信を行う。

Twitter:https://twitter.com/itacchiku

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ーー得意なこと、苦手なことがかなり違うんですね。フォローの仕方も変えていますか?

なちゅ。:「お子さんが発達障害だから、親が勉強も色々フォローしているのですよね?」と聞かれることがあるのですが、私が「勉強を教える」ことはほとんどしていません。基本的にそれは全て学校に任せています。

 同じ単元の内容でも、今の学校の教え方と、私がかつて教わってきたやり方が違うことがよくあって、親である自分が下手な教え方をすると子どもが混乱してしまうんですよね。小学校入学時から二人とも支援級に在籍しているので、学校と支援計画の相談を定期的にするのですが、先生からも具体的な単元学習については、学校に任せてほしいと言われています。

 それに、そもそも低学年の学習内容は簡単すぎて逆に教えるのが難しく、高学年の学習内容はすでに私の記憶があいまいで……。しかも、その子に合った教え方をしなくてはいけない。素人には難しいですね。子どもの学習というのは、やはりプロの仕事だなぁと思います。

 とはいえ、親として子どもの学習が気にならないかといえば、やっぱりうそになりますね(笑)。なので、親としては具体的な学習内容よりも、「勉強のやり方」を少しずつでも伝えられたらなあと思っています。

勉強そのものではなく、「勉強のやり方」を教える

ーー確かに、「勉強のやり方」は、学校では教えてくれないですよね。大人になってから気づきました。

なちゅ。:私自身が、子どもの頃そこでつまずいたんです。

 私は小学校1~2年生くらいまでは、周囲よりもいろんなことの理解が早くて「優秀な子」と言われていました。授業を聞かなくても、教科書の内容がわかるくらい。テストの点数も100点満点が基本でした。

 それが、小学校3年生くらいになったら、学校で授業を受けることそのものに飽きてしまった。いま思えば、これもADHDの特性だったと思うのですが、学校という環境に目新しさがなくなるんですよね。新しいことを知るのは大好きなのに、大きな変化もない授業のリズムには興味が持てず、集中力を失って、だんだん勉強についていけなくなったんです。

 これもADHDの特に女の子に多いと言われる特性なんですが、空想癖があって、授業中は、ずっとぼーっとしている。

 発達障害に対して今ほど理解のない時代のことです。周りの大人からすれば、子どもが学校そのものに興味を失っているなんて想像もできないでしょうし、それまで勉強ができていた子が実は「勉強のやり方」がわかっていないなんて思いもしないでしょう。

 子どもだった私自身も、それまで意識して勉強をしたことがなかったので、勉強にやり方があるという発想すらなく、誰かに聞くこともできない。私が抱えている問題に誰も気づかないから、当然、解決方法を教えてもくれないですよね。で、成績が悪くなると、「自分は勉強ができない/嫌いなんだ」と思い込む、嫌いだからさらに勉強しない……私の学生時代はこの悪循環がずっと続いていました。

 それが、大人になってから発達障害について独学して、自己分析してみると、「勉強ができない」の解像度が上がって、その中身が見えてきたんです。

ーー「勉強ができない」の中身ですか。

なちゅ。:たとえば、

・そもそも「勉強のやり方」を知らなかった

・学校で基本とされる反復学習がとにかく苦手だった

・目に入ったものに意識が引っ張られてしまい、授業に集中できなかった

・先生が授業中に言った「ふわっとした指示」が読み取れず、内申書のための課題を出さなかったので成績が悪かった

 などなど……。

 どれも、私の場合は発達障害の特性が強く影響していました。

 自分で「できない」の中身がわかっていたら改善できたことだったなあと思いましたし、実際に自分の特性を理解してからは、発達障害以外の分野の独学の速度も楽しさも一気に上がりました。いまは、あの頃の私が求めていたものに、やっとたどり着けたのかという思いです。

ーーお子さんを見ていて、ご自身と似たような傾向はありますか?

 現在の次女がこんな私と本当にそっくりなんですよ。同じように学校そのものに飽きているし、知識欲はひたすら高く新しいことを知るのが大好きなのに、日本の義務教育では定番の反復繰り返しなコツコツ型の学習がとにかく合わなくて、自分は勉強ができないと思い込む……。

 経験者としては、もう必死ですよね。あの頃の私が誰かに教えてほしかったことや、しなくてよかった回り道を何とか回避できないか、親として試行錯誤の日々です。

「行動記録表」と「しんどいの棚卸し」

ーーぜひ、「勉強のやり方」の具体例について教えてください。

なちゅ。:子どもの勉強は(大人もですが)365日の生活習慣と一体です。生活がめちゃくちゃだと、勉強も効率が悪い。だから、親として、子どもの習慣とか、スケジュールづくりをサポートしています。

『独学大全』の技法だと、「行動記録表」はよく作りますね。行動記録表っていう名前で呼んでいなかったけれど、自己流で以前からよくやっていました。

 数週間でも数ヵ月でも、毎日毎日子どもの行動を記録してみると、いろんなことが見えてきます。

 発達障害の子は、気圧とか、寒暖差とか、思春期の女の子であれば女性ホルモンの周期とか……。感覚が過敏な傾向があると、特にこの辺の影響を強く受けがちですね。でも、本人が「今気圧で調子が出ないな……」と知識のない中で自力で気づくのは難しいですから、大人が教えてあげる必要がある。関連するデータや過去の記録をもとに話をすると、本人も「なるほどー!」ってなりますね。

 そうすると、だんだん子ども自身が自分からデータを調べたりするようになりましたし、なにより、自分が思うように動けないことにうしろめたさを感じにくくなるというか、いい意味であきらめがつくというか。わけがわからないまま、ただ漠然と「自分はできない人間だ」と思い込むのを避けやすくなる。

ーーなちゅ。さんが考案されたハックもあるそうですね。

 もうひとつ、我が家のオリジナルで「しんどいの棚卸し」っていうのもやっています。自分がやっていることをメタ的に眺めるという意味では、『独学大全』の技法55「メタノート」に似ていますね。

 子どもと一緒に

・やりたいこと

・やらなくてはいけないこと

・やったほうがいいこと

 を私がヒアリングして、ぜーーーんぶホワイトボードに書き出していく。

 さらに、それぞれの項目に対して自分がどう感じているのかを、、ネガティブな感情も含めて認めて書きだしていくんです。

 建前とか「こうあるべき」という理想は横において「やりたくない」とか「めんどくさい」とか、そういうのも言ってしまって全然OK。

 そのうえで、なんでしんどいと感じるのかな? どうしてめんどくさいんだと思う? というところまで掘り下げるんです。メタを重ねながら解像度を上げていくというか。

 書き出したら、「やりたいこと」から優先順位をつけていく。そして、やりたいことをやるためには、やらなければいけないことをどう解決するかって考えるんですね。

 こうすることで、子ども自身が「あれもやらなきゃ、これもやらなきゃ、しんどい」というモヤモヤを抱えた状態から、いったん抜け出せるんです。

「苦手」→「なぜ苦手か」→「なぜやらなければいけないのか」と解像度が上がる

 それに、こういうメタ認知での自己分析を繰り返すと、この学習の仕方がなぜ自分は苦痛に感じるのか、という分析もできます。また、学校で繰り返される反復学習や課題が何を目的にしているのかというところも自分で考えられるようになっていきました。

 現在9歳の次女は、特にこの思考を掘り下げる作業を得意としています。

 最近では反復課題が苦手で継続して学校にいられない自分のペースを逆手にとって、単元の導入部分は学校で学び、クラスが反復課題をやっているときは自宅で休養し、仕上げテストのときに登校するというペースをつかみ始めています。そのための時間割の確認も先生と次女本人が直接するようにもなってきました。

 もちろんこれは、そういう次女のペースを理解してくださっている先生のおかげでもありますね。





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