読書猿の「独学」なんでも相談

『独学大全──絶対に「学ぶこと」をあきらめたくない人のための55の技法』著者の読書猿さんが「勉強が続かない」「やる気が出ない」「目標の立て方がわからない」「受験に受かりたい」「英語を学び直したい」……などなど、「具体的な悩み」に回答。今日から役立ち、一生使える方法を紹介していきます。

※質問は、著者の「マシュマロ」宛てにいただいたものを元に、加筆・修正しています。読書猿さんのマシュマロはこちら

Photo: Adobe Stock

[質問]

 今私は20代の公務員なのですが、今後のキャリア形成のことを考えた時に、とにかく「今のままじゃまずい」という思考にとらわれてしまいます。そもそも公務員なのだから、そんなキャリアについて悩む必要もないのではないか、という見方もあるのかもしれませんが、どこか公務員でい続ける自分に納得がいかないのだと思います。

 そこで、とにかく勉強だけは継続させようと、勉強の習慣は確実に身に付いていると自信を持って言うことができます。実際に1年以上前から独学大全を読み始め、背伸びをせずに独学の土台である「国・数・英」の勉強をひたすら継続してきました。(本当に『独学大全』にはお世話になっております。本当にありがとうございます。)しかし今の自分は、ただ仕事をして、ただ勉強しているだけの奴なのです。勉強以外に大して何も取り掛かっていない。

 しかし、何か現状に満足できず惨めな自分を打破したいと思うからこそ学んではいるのですが、公務員という身分上、ある程度給与体系もしっかりしているので、わざわざ今の環境を捨ててまで、何か挑戦するという一歩を踏み出す勇気もないのだと思います。そのためか、今の現状に満足できないながらも、目標がうまく立てられません。(勉強の目標であれば立てられるのですが…)

 そんな時にSNS上で「やるやつはすぐやる」「インプットしたことはアウトプットしなければいけない」などの言葉を目にすることがあり、心が騒つかされ「あぁ今の自分は勉強するだけで何にもしてないな」と焦りを感じてしまいます。

 過去に読書猿さんは「やりたいことを見つけるには、途方に暮れ続けるしかない」ということをおっしゃられていたかと思いますが、自分のキャリアについての向き合い方を教えていただけませんでしょうか。

「変わらない日常」を続けているのはすごいことです

[読書猿の回答]

 大変失礼ながら、とある「意識の高い」公務員の方を思い出しました。投資サロンに参加し、そのまま十代の若者に「投資」を主とする個人事業主として給付金への申請を勧めるグループにも参加した人です。

 その方は自分のキャリア形成を真剣に考え、公務員として決まったレールの上を生きるのではなく、自分の才能と能力でいくらでも成功できる投資家として生きることを選びました。サロン主催者が考えたプランは、投資の元手を稼ぐという目的の一点では、すごぶる効率的でした。制度のギャップに気づき、他に先んじて動く行動力さえがあれば、お金はいくらでも稼げるのだと実感したことでしょう。

 今、主催者はさっさと海外へ高跳びしました。残されたメンバーは今まで、自分たちは「金を掘りに来た連中にスコップを売りつけて儲ける側」だと思っていたのかもしれません。公務員のその方は、自分の投資センスが買われたのではなく、公務員だから書類くらいは作れるだろうと見込まれ、グループに引き込まれたのだと思い知っていることでしょう。

 さて、変わらない日常は、我々の視野に入らないものも含めて、無数の努力と創意によって支えられています。あなたがどんなお仕事をされているか分かりませんが、それもまた日常を支える努力と創意のひとつであるはずです。

 勉強しているだけ、仕事をしているだけ、なんて言わないでください。

 去年、私が『BIG ISSUE』誌に書いた短文から少し引用します。

「コロナ禍は、これまで「当たり前」と思い意識してこなかった、様々な人がそれぞれの持場に注いできた細心の注意を、日常を支える絶えざる努力を、私達にも目に見えるようにしてくれた。

 歴史が教えるところによれば、革命といった大事は、理想の未来を構想した理想家・夢想家が導いて引き起こすものではなく、不意に襲ってきた変化に抵抗し、元の暮らしをなんとか守ろうとした市井の人々の努力の意図せざる結果として生じるものであるらしい。

 変えてはならないものを変えないために、私達は変わり続ける。」



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