※冒頭写真はコープなんごうでのEV展示風景。

大和高田市で講演する機会をいただきました

11月には運営会社がアユダンテ株式会社からENECHANGE株式会社に変わるなど、EVsmartブログとしても激動の1年となった2022年。現在一般投票募集中の「Japan EV of the year(ジャパンEVオブザイヤー)」を立ち上げたように、数多くのEVが日本国内でも発売されて、いよいよ日本でも本格的なEV普及の幕が開いた印象です。

とはいえ、日本国内ではまだまだ「すべてEVにするのは現実的ではない」といった論調が根強いのも事実です。

実は昨年末の12月11日、「市民生活協同組合ならコープ」からお声がけをいただき、奈良県大和高田市の「コープなんごう」で開催されたEVイベントで講演をしてきました。地元の日産ディーラーさんなどが協力した展示試乗会も開催するということだったので、私は長距離試乗を兼ねてフォルクスワーゲン『ID.4』で遠征(レポートはこちら)。会場で車両の展示も行いました。

参加いただいたみなさま、ありがとうございました。

この講演のテーマが「電気自動車は本当に普及するのか?」でした。世界中のEVシフトの現状などを説明した上で、日本におけるEV普及の課題を考える内容です。

EVsmartブログ、新年の幕開けとなる今日の記事では、この講演でも指摘した日本のEV普及における「2023年の注目ポイント」を紹介しておきたいと思います。

ちなみに、今回ならコープで行ったようなEVについての講演や試乗会。機会があれば全国各地出かけていきますのでお声がけください(問い合わせフォームはこちら)。

奈良への出発前。御殿場〜沼津までbZ4XとID.4を試乗して、充電させていただいた静岡日産沼津店にて。カーライフアドバイザーの方が着ていた「時代は電気」のハッピがうれしくて、お願いして写真を撮らせていただきました。

なぜ、EVシフトが必要なのか?

日本の課題を挙げる前に、本当にこのまま世界中で乗用車のEVシフトが進むのか、なぜ、EVシフトが必要なのかについてのポイントを考えておきましょう。

世界中でEVシフトが急がれているのは、言うまでもなく2015年のCOP21で示された「産業革命以後の平均気温上昇を2℃未満に抑制する。1.5℃未満への抑制が努力目標」とするパリ協定の目標を達成するためです。

2050年までのカーボンニュートラル(CN)に向けて取り組む国・地域)/142(2018年実績)

日本を含めて142の国や地域が2050年までのカーボンニュートラル実現を表明しており、脱炭素社会の実現はすでに世界の総意となっています。乗用車のEVシフトは脱炭素社会を実現するためのピースのひとつに過ぎませんが、モビリティの脱炭素を進めるために、現時点で最も現実的で有効な手段であるという認識が世界の常識となっています。

また、これは個人的な体験からの思いとして、個人が移動の自由を確保する手段として「電気自動車のほうがエンジン車よりも気持ちいい」ことが、とても重要なポイントだと考えています。端的に断言してしまうと「エンジン車よりもEVのほうが優れている」ということです。

世界各地で期限を区切った「エンジン車販売禁止」のルールが定められ、メルセデス・ベンツやフォルクスワーゲングループ、さらにはアメリカのフォードやGMまで、有力自動車メーカーのほとんどが、続々とEVシフトへの意欲的な目標を示しています。

【参考記事】
世界の自動車メーカー電気自動車シフト情報【まとめ】2021年2月〜ジャガーもフォードも本気です(2021年2月19日)
日本も2030年代半ばにガソリン車販売禁止の方向へ〜世界の動きや理由とは【まとめ】(2020年12月3日)
各国のガソリン車禁止・ディーゼル車販売禁止の状況(2022年10月5日)

EVはエンジン車より気持ちいい乗り物なのですから、多くのメーカーから魅力的で多彩なEVが発売されて、多くの国が政策的に脱エンジン車を進めている世界で、EVシフトが進まない理由はありません。世界では、EV普及がますます進んでいくのです。

日本でも「なぜ、EVシフトが必要なのか?」という問いの答えが、ひとつは「脱炭素社会実現のため」であるのはもちろんです。そしてもうひとつ、日本の屋台骨ともなっている自動車産業が滅びることがないようにするためにも、EVシフトを意欲的に進めて、世界中で多くの人が買ってくれる魅力的なEVを開発する必要があるからです。

欲しくて買えるEVの選択肢を!

長くEV取材を続けてきた体感として、日本のEVシフトを進めるために現状では大きく2つの課題があると考えています。「欲しくて買えるEV車種の拡充」と「充電インフラの拡充」です。

まず、「欲しくて買えるEV車種の拡充」について考えます。2021年から2022年にかけて、日本国内でも多くのEVが発売されました。2023年以降も、さらに多彩な新型EVが登場してくることでしょう。

とはいえ『EVはやっぱり高い?【2022年12月】日本で買える電気自動車の価格を整理してみた』(2022年12月7日)という記事で紹介したように、今、日本国内で購入できるEVの新車価格は500万円〜800万円程度がボリュームゾーン。メルセデス・ベンツやBMW、アウディなどの欧州メーカー、さらにテスラなど、1000万円オーバーの魅力的な車種も多彩に揃っています。

新車価格400万円台以下で購入できる乗用車は、ヒョンデ IONIQ 5のベースモデルや、少々コンセプトの古さが目立ち始めてきた上に先日値上げした日産リーフ(40kWhモデル)と、日産サクラ、三菱eKクロスEVの軽EV2車種だけといった状況で、1月31日にはBYDのATTO3が440万円で発売されることが発表されています。

年末に公開した『ジャパンEVオブザイヤー』投票速報の記事でも書きましたが、せめて「300万円で300km」を実現してくれる車種が続々と登場してくれれば、日本でのEV普及にも勢いが増すだろうと期待しています。

日本よりも新車販売におけるEVのシェアが高まりつつある欧州では、フィアット500e(日本仕様よりも手頃なモデルもラインナップ)やルノーのサブブランドであるダチア スプリング、ヒョンデのコナEVなど比較的手頃な車種が販売ランキングの上位に名を連ねています。また、中国では日本でも45万円EVとして話題になった宏光MINI EVや、今年の夏頃には日本でも発売が予定されているBYDのドルフィンなど、「大衆車」と呼べる価格のEVの車種が人気となっています。

出典/CleanTechnica

サクラやeKクロスEVがある程度ヒットしたのも、日本のみんなが手頃な価格のEVを待望している証左でしょう。はたして、日本のメーカーから「魅力的な大衆車EV」がさらに発売されるのか。欲しくて買えるEVが登場してくれるかどうかという点が、2023年以降の最大の注目ポイントといっていいでしょう。

一点、誤解がないよう補足しておくと、EVsmartブログ、そして私は何も「すべてEVにするのが正しい」と言っているのではありません。ハイブリッドを延命するのも正しいでしょう。でも、早く世界で通用するEVを作れるようにならないと大変なことになりますよね、ということです。「全部本気」で世界と闘えるのなら、それが一番だとは思います。ただし、個人的には「エンジン車を買うくらいならマイカーは無しでいい」とは思っています。

充電インフラの正しい進化を!

日本の現状における、もうひとつの大きな課題が「充電インフラの拡充」です。EVsmartブログご愛読者のみなさまには改めて言うまでもないことですが、EVの充電には用途によって ①基礎充電/自宅ガレージなどでの「普通充電」 ②目的地充電/宿泊施設やレジャー施設での「普通充電」 ③経路充電/高速道路SAPAや幹線道路沿い施設での「急速充電」 という分類がなされています。

まず、普通充電設備を活用する「基礎充電」や「目的地充電」については、EVsmartの運営会社となったエネチェンジをはじめ、数社の充電サービスベンチャーが意欲的に設置を進めており、数年後にはかなり様相が変わってくるだろうと期待しています。

具体的には、集合住宅の駐車場や、宿泊施設、ゴルフ場などにはEV用充電設備が複数台設置されていて当たり前という日本になっていくだろうということです。

一方で、少し心配しつつ状況を見つめているのが、経路充電、ことに高速道路SAPAへの急速充電器拡充の状況です。ユーザー目線での要望としては「適切な場所に、高出力器複数台設置を急いで欲しい」ということになります。

日本国内の急速充電インフラ網の拡充については、株式会社e-Mobility Power(以下、eMP)が主導的な役割を果たしています。eMPのキーパーソンは電力会社出身の方々で、トヨタ、日産、ホンダ、三菱と4社の自動車メーカーが出資しているものの、インフラ拡充の方針などに自動車メーカーが深く関与している様子は感じられません。

先に「エンジン車よりもEVのほうが優れている」と断言しました。こう言うと、「航続距離が短くて充電に時間が掛かるEVの何が優れているんだ?」と反論を叫びたい方が少なくないことでしょう。でも、「適切な場所に、高出力急速充電器の複数台設置」が進めば、航続距離が短いことや充電時間はEVにとってさほどの欠点ではなくなるのです。細かな説明は割愛しますが、ご自身でしっかりとEVを活用してみていただければ、どういうことか理解はしていただけると思います。

つまり「急速充電はEVの性能そのもの」でもあるということです。従って、テスラは自社でスーパーチャージャー網を構築しているし、フォルクスワーゲングループでは日本でも「プレミアムチャージングアライアンス(PCA)」(関連記事)と名付けた自社ユーザー限定の急速充電インフラネットワークの構築を進めています。

テスラのスーパーチャージャーは現在主流となっているV3というバージョンの最大出力が250kW。フォルクスワーゲングループのPCAでは最大出力150kW級の充電器設置を進めています。

一方で、eMPでも高出力器複数台設置を進める意向はあるものの、現状で高速道路SAPAに設置されている急速充電器の出力は90kW。しかも、首都高大黒PAの6口器は最大90kWの出力は15分しか維持できない「ブーストモード」と呼ばれる謎仕様を採用。名神草津PAなどに設置されている90kW器は2口器となっていて「ダイナミックコントロール」と呼ぶユーザーには謎の仕様で、2台が同時に充電すると出力が半分ほどに制限されてしまいます。

大容量バッテリーを搭載した高級EVがその性能をフルに発揮するためには、少なくとも90kW(200A)レベルでしっかり30分充電できることが重要です。バッテリーの小さなEVであれば、充電待ちの心配がないよう、基幹SAPAには少なくとも4〜6台の充電器が並んでいて欲しいところです。

eMPの主体は電力会社ですから、まずは網羅することを重視して、ブーストモードやダイナミックコントロールといった謎仕様を備えた「なんちゃって90kW器」で整備をすすめていくというのも、日本のEV普及の現状を考えるとやむを得ないことなのかも知れません。

しっかり90kW、できれば150kWでの急速充電インフラ拡充を進めるのは、高級EVの性能を担保するためのことであり、本来はテスラやフォルクスワーゲングループのように、EVを発売する自動車メーカーが主導的役割を果たすべきことなのでしょう。

eMPの前身は、トヨタ、日産、ホンダ、三菱の自動車メーカー4社が主導的な役割を果たしていた日本充電サービス(NCS)という会社でした。自動車メーカー主導で急速充電インフラ拡充をというと「以前に逆戻り?」と感じる方がいるかも知れないですが、当時構想されたのは24kWhリーフを想定したインフラ網やサービス内容でした。螺旋階段のように時代は巡り、市販EVは進化しています。今後登場する「魅力的なEV」に見合った急速充電インフラ網の構築には、国内の主要な自動車メーカーが改めてしっかりと関与していくべきではないでしょうか。

はたして今年、高速道路SAPAにどのような急速充電器が新設&置換されていくのか、改めて注目していきたいと思います。

いずれにしても、今年はますます電気自動車や再生可能エネルギーに関する興味深いニュースが増えていくのだろうと期待しています。読者のみなさま、2023年も引き続きよろしくお願いいたします!

文/寄本 好則





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